エリック・ロメールどんな人?作品は?シェイクスピアに似てる?

映画文化が発祥の地がどこかを知っていますか。
イメージで言ったら、ハリウッドって思いませんか。
実は、フランスなんですね。
フランス映画監督の中から、エリック・ロメール監督をご紹介します。

映画に新しい波をもたらしたエリック・ロメール監督の生き方は、「オンリーワン」の人生」を教えてくれます。

エリック・ロメール、どんな人

フランス映画の監督者の名前を何人くらい、ご存知ですか。
ジャン=リュック・ゴダール
フランソワ・トリュフォー
ロベール・アンリコ
リュック・ベッソン
ジャン・ピエール・ジュネ
そして、これらの監督たちに影響を与えたのが、エリック・ロメール監督です。

エリック・ロメールは、ヌーヴェル・ヴァーグ※の青春時代1957年から1963年まで「カイエ・デュ・シネマ」誌の編集長をつとめていました。
※ヌーヴェルヴァーグ(Nouvelle Vague)は、1950年代に始まったフランスにおける映画運動で新しい波を意味します。
そう、最初は映画ではなく、編集をしたいたんですね。

1956年には、クロード・シャブドルと共著の「ヒッチコック」を書き、「ヒッチココ・ホークシアン」とよばれるほどの、ヒッチコックりハワード・ホークスの映画作家としての評価と崇拝を同誌の伝統に定着させた中心人物として知られています。

映画を撮り始めたのは、50年代に弟分であるジャン=リュック・ゴダールと組んで短編からはじめたそうです。
長編は、シャブロルが出資した1959年に第1作目の「獅子座」を撮影しましたが、大コケしたそうです。
弟分のジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーに大きく後れをつることになってしまいました。

ただ、温厚で博学で、映画のみならず古典文学にも造詣のあるエリック・ロメールはこれで終わりませんでした。
製作者のバルべ・シュレーデル、撮影のネストル・アルメンドロスのスタッフを得て、大輪の花を咲かせるように創作活動は続いて行きます。

1967年発表の「男をコレクションする女」は、ベルリン映画祭審査員特別賞に輝き、「六つの教訓物語・第4話」というシリーズタイトルで人々目を惹きつけました。
1962年に短編の「モンソーのパン屋の娘」を第1話として、同じシチュエーションで男女の物語を同じ話法で描き、全六作として限定して撮影しました。
同じ俳優は別な作品では使わないという制限を自らに課して、単純で壮大な企画を進行していたのです。

2年後の1967年に第3話「モードの家での夜」を発表。
1970年には、第5話「クレールの膝」を発表。
1972年に、最終編として第6話「愛の昼下がり」を発表。
10年がかりでシリーズ「六つの教訓物語」は、一作ごとに艶とみずみずしさを増しながら完成しました。

エリック・ロメールは、1920年4月4日フランスナンシーに生まれました。
本名はモーリス・シェレール。
古典文学の造詣が深く、文学教授の資格をもち、1940年代後半にシネクラブを組織して、若きジャン=リュック・ゴダールやジャック・リヴェットらと1930年代のB級アメリカ映画を浴びるほどみて、「ガゼット・デュ・シネマ」を創刊しました。
アンドレ・バザンやフランソワ・トリュフォーの「オブジェクティブ49」のグループと交流しながら、やがて「ガゼット・デュ・シネマ」に合流することになりました。

1957年に「カイエ」の編集長につきました。
路線を踏襲しながら、ジャン・ルノワールの復権、ロベルト・ロッセリーニの復権、ヒッチ・コックとホークスの作家性をアピールする等、映画の作家主義を浸透させ、1963年に「カイエ」を自ら去るまで、ヌーヴェル・バーグの興隆を支える中心人物であったのです。

海辺のポーリーヌパンフレットから抜粋

エリック・ロメールという人物は、元は活字の人であったという。
古典文学にも造詣が深く、時間をかけながらもヌーヴェル・ヴァーグの興隆を支える人であり、自らも製作者や撮影者と出会って、時間をかけて映画製作をしたというキャリアが面白いと思いました。

エリック・ロメールはその後、1980年代になると新しいシリーズを撮影し始めています。
そのテーマは「喜劇と格言劇」。
俳優は限定などせずに、何作にでも自由に起用しています。
毎作品ごとに格言がついています。
ロメールの手法は、シェークスピアにさかのぼるポピュラーな伝統に従って作ったといいます。

 

エリック・ロメール、作品は

ここでご紹介する作品は、日本で公開された映画です。

エリック・ロメール監督の撮影に関するこだわりがあります。
初期は「六つの教訓シリーズ」で、全六作と決め、同じ俳優は起用しない、同じシチュエーションで男女の物語を同じ話法で描きました。
次の期間は、「喜劇と格言」をテーマに、俳優は限定をせずに自由な起用をしています。

エリック・ロメール監督による作品として、日本で初めて登場したのが「海辺のポーリーヌ」という作品でした。
舞台は夏のノルマンディの海辺。
中心には15歳の少女ポーリーヌ。
ポーリーヌを含めた6人の登場人物がポーリーヌの美しい従妹をめぐり、恋のゲームを繰り広げます。

海辺のポーリーヌパンフレットより抜粋

海辺のポーリーヌの格言は、喜劇と格言劇の3作目になり、格言は12世紀の騎士道物語作者のクレチアン・ド・トロワによる<言葉多すぎるはおのれを傷つけるものなり>

海辺のポーリーヌを鑑賞した時に、とにかくセリフの多さに驚きました。
6人の登場人物が恋のゲームを繰り広げるのですが、単なる恋愛模様を描くというよりも、登場人物がいろいろと語るのです。
面白くないのか、ではなく、人間の普段の様子って実はこうじゃないのかと思わせてしまう不思議な魅力がありました。

ああでもないこうでもないと語り続ける繰り返しのストーリーに癖になる面白さを感じました。
エリック・ロメール監督が描く喜劇と格言劇は、恋愛を描いているようで、実は喜劇であるというのもうなづけます。

続いて、鑑賞したエリック・ロメール作品は「満月の夜」でした。

エリック・ロメール監督による「喜劇と格言劇」シリーズの第4作。
1984年製作。
パリ郊外のアパートで建築家の恋人レミと暮らすインテリアデザイナーのルイーズ。
生真面目なレミと自由奔放なルイーズの間には口喧嘩が絶えない。
レミとの生活に息苦しさを感じたルイーズは、パリに自分だけの部屋を借り、妻子持ちの親友オクターブと遊び歩くようになるが……。
2人の男と2つの家の間で揺れ動く女性の感情を繊細に描き出す。
主演のパスカル・オジェは本作でベネチア国際映画祭主演女優賞を受賞したが、その直後に25歳の若さで急逝した。
共演に「クレールの膝」のファブリス・ルキーニ、「ニキータ」のチェッキー・カリョ。

この作品の魅力は、俳優のパスカル・オジェの魅力につきます。
インテリアデザイナーの役割なので、暮らしているアパートメントの部屋がシンプルでステキだという印象が残っています。

フランス、パリでの暮らしを知る手掛かりとして、街中に住むのではなく、パリの郊外にあるアパートメントも出てくるのが新鮮でした。

とにかく主演の主人公が印象は儚げな女性なのに、自分をしっかりともっていて、それが強烈なパンチとなって、自分に向かってくるじわっとした衝撃がありました。

この作品を鑑賞した時の自分は20代、自分は何者かと迷っている時期に出会っているため、主人公の生きる姿勢にあこがれを感じていたのかもしれません。

 

エリック・ロメール、シェイクスピアに似ている?

エリック・ロメール監督がシェークスピアにさかのぼるポピュラーな伝統に従って作品を作ったといいます。

シェイクスピアはイングランドの劇作家・詩人です。
イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物です。
卓越した人間観察眼からなる人間の内面の心理描写により、もっともすぐれているとされています。

シェイクスピアの物語の多くは、当時のイギリスを舞台とはせず、遠い外国や過去を舞台にしたものばかりです。
当時は演劇の上演にも検閲がなされ、国王や国家、教会に対して、批判したり諷刺したりすると取り締まられることもありました。

シェイクスピアは、時にはそういった要素を盛り込みながらも、「これは昔の話ですから」「あくまで外国が舞台です」とうまく立ち回って作品を次々に発表し、人々の心をつかんでいきました。

このバランス感覚は、時の権力への対応の仕方だけでなく、王族から庶民に至るまで、あらゆる層の人を楽しませる作品を書いたという意味も含みます。
「いかようにも解釈できる」バランス感覚と主題のよさが、後の時代に多くの翻案作品を生み出していくのです。

エリック・ロメール監督が描いた作品、特に「喜劇と格言」では人間を観察しながら、格言を持ってくるという点が、人に興味を持たせる作品作りをしている気がします。
海辺のポーリーヌで持ってきた格言は12世紀の騎士道物語作者のクレチアン・ド・トロワによる<言葉多すぎるはおのれを傷つけるものなり>

6人の登場人物の恋愛ストーリですが、とにかく人物がよくしゃべるんです。
多すぎる言葉は、自分を傷つけるっていうところが大いにうなづけます。

満月の夜のストーリーは、パリ郊外のアパートで暮らす建築家とインテリアデザイナー。
生真面目な建築家と自由奔放なインテリアデザイナー。
インテリアデザイナーは息苦しくなり、パリに自分専用の部屋を借りる。
やがて、彼女は妻子持ちの友だちと遊び歩くようになる。
2人の男と2つの家の間で揺れ動く女性の感情を繊細に描き出す作品。

この映画の格言は、
「ふたりの妻を持つ者は心をなくし、二つの家を持つ者は分別をなくす」

普遍のテーマを題材に映画を作ったエリック・ロメール監督の生き方は、
「オンリーワンの人生」を教えてくれまています。

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